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名古屋地方裁判所豊橋支部 昭和49年(ワ)16号 判決 1979年3月27日

主文

一、被告会社を解散する。

二、訴訟費用は被告会社の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

(原告)

一、主文と同旨。

の判決。

(被告)

一、原告の請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二、請求の原因

一、被告は、昭和四年三月一五日設立された合名会社(設立当時は合資会社であつたが、昭和一六年四月二五日合名会社に組織変更)であるが、出資総額は現在八一、二二五円であり、会社の目的は、現在(昭和一六年四月二五日変更以後)、

(一)各種繊維の売買業。

(二)特殊繭及び各種繊維の反毛、脱色、脱脂、染色並びにその化学的処理業。

(三)土地売買業。

(四)他の事業に投資すること。

(五)前各項に付帯すること。

となつている。

二、原告は、被告の社員であり、現在における社員の氏名及び出資の価額は、

(一)清水三郎    二〇、二五〇円

(二)原告      一三、五五〇円

(三)大林茂     一三、五五〇円

(四)清水昭好    一三、五五〇円

(五)金子原司    一三、五五〇円

(六)鈴木栄一     六、七七五円

となつている。

三、被告は、昭和二〇年頃から事実上休業状態にあり、第一項記載の目的事業を営むことなく、今日に至つているが、被告肩書地にある所有土地(約一、三五〇坪)及びその地上建物を、訴外丸共精練株式会社に正当な対価なくして使用を許しており、これは同会社の役員及び主たる株主として、前記清水三郎、大林茂、清水昭好(この三名は、製糸業を営むものであり、且被告と競業関係に立つ訴外会社の取締役に就任するについて被告の他の社員の承諾を得ていない。)が就任し、同人ら及び訴外会社の利益にのみ供せられるに対し、その反面、被告及び原告他二名(この三名は、いずれも製糸業を止め、現在これに従事していない。)の損害は甚大なものとなつている。

四、そして原告及び金子は、それぞれ、それらについて改善策を種々提案したが、容れられるところとならず、現在においては、被告の社員が三名対三名という比率を以て利害相反状態に入り、全く収拾のつかない有様となつており、また被告に対する出資持分の譲渡は、総社員の承諾を要する(定款)ため、その要件を満すことが不可能な実情にある本件では、これによることもできず、以上の各事情に照し、被告の解散も真に止むを得ないものという他ない。以上の点に関する被告の主張を争う。

五、よつて前示のとおり求める。

第三、請求の原因に対する答弁

一、第一項、第二項の事実を認める。但し金子原司は昭和四八年四月一四日死亡し、金子龍太郎が入社している。(なお後述参照)

二、第三項の事実を争う。但し土地、建物の所有関係、使用関係(但し後述のとおり賃貸借)、清水ら三名の営業関係の各点を認める。

即ち、被告は、昭和二〇年六月戦災により所有建物の大半を焼失し、一時休業状態にあつたが、昭和二五年頃から前記訴外会社に対し土地及び建物を賃貸し、その賃料収入から固定資産税その他の必要経費及び若干の配当金の支払をしているものである。なお、訴外会社は、被告の存続を図るために設立され、被告の総社員の同意の下に、当時の被告代表社員清水壽一が訴外会社代表取締役、被告社員大林正志が同取締役に就任し、終戦後の混乱期に被告の別会社として営業活動を行い、前記の賃料により被告の必要経費を賄つてその存続維持に寄与してきた。被告が戦災による壊滅的打撃を受けなから、今日まで存続し、その主要財産たる不動産を完全に温存し得たのは、ひとえに以上の措置によるものである。

三、第四項の事実を争う。原告こそ、昭和四二年頃ボーリング場経営に事業転換するよう無謀な提案をし、他の社員の反対により実現しなかつたから幸いであつたものの、もしこれを容れていたならば、被告は完全に経営の破綻を来していたものである。そして社員鈴木栄一、金子龍太郎は、昭和四九年八月一〇日止むを得ない事由によりそれぞれ退社し、現在社員四名となり、このうち原告を除くその余の三名は被告を現状のまま存続させることを望んでおり、原告のみ自己の個人的事情を理由に解散を要求しているにすぎないから、社員間に激しい不和対立が存するとはいえない。しかも原告は、入社以来経営に全く関与せず、他の者に委ねていたのであるから、原告はその持分権を保持するため会社の業務や財産の状況を検査する(商法第六八条、民法第六七三条)権限を行使すれば足り、また退社して持分権を清算することもできるのであるから、現時における企業維持の原則を重視する傾向に照しても、被告の解散は許されるべきでない。

第四、証拠(省略)

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